豊橋駅 知立の大あんまき
東海道線の豊橋駅で乗換の時、楽しみにしているものがある。
立ち食いのそばを掻き込む、或は売店で土産や駅弁等を物色するのも良いが、もう一つの楽しみだ。
それはこの駅の売店で、「池鯉鮒名物 大あんまき」を、買うことが出来るからだ。
この「大あんまき」は、当日製造・当日出荷に拘っている。
従って早朝では買えないが、大凡10時以降ならまず手に入り、乗り換え時の楽しみの一つと成っている。
豊橋は、かつての東海道五十三次の吉田宿と言われたところだ。
ここから京に上って更に7里余り(28qほど)行くと、39番目の宿場町・池鯉鮒(知立)がある。
この池鯉鮒(知立)では、江戸時代から麦が栽培されていた。
その麦から作った小麦粉を溶いて、それを伸ばして焼き、塩餡を挟んだ物を茶菓子として茶屋で売り始めた。
これが当時街道を往来する旅人や、休憩する人々に大そう持て囃され評判を呼び、名物と呼ばれるようになった。
宿場は大いに繁栄した。
明治に入り、鉄道が敷設されるが、東海道本線が南に離れて通った為、知立と言う駅は設けられなかった。
今では僅かに、それとほぼ併走して走る名鉄の名古屋本線に、「知立」駅が残されているだけだ。
天竜浜名湖鉄道 新所原駅
地元の人々が愛着を込めて呼ぶ「天浜線」は、天竜浜名湖鉄道(株)の「天竜浜名湖線」の愛称である。
東海道本線の新所原から、浜名湖西岸を行き、奥浜名で進路を東に取り、天竜川を渡り同本線の掛川へと向かう。
前身は東海道本線のバイパス路線として開業した旧国鉄の二俣線で、昭和62年に業務移管されている。
現在は、第三セクター企業が運営するローカル路線で、67.7Kmを38駅で結んでいる。
運行する車両は、TH2100型と言われる、たった1両の可愛らしい気動車である。
白をベースに、ブルー、オレンジ、グリーンのラインで彩られたカラフルなデザインは、公募されたものだ。
JR東海道本線新所原駅の構内に、「天浜線」の小さな起点駅は併設されている。
直ぐ西が静岡県と愛知県の県境で、ここは同線の西の終点駅である。
JRが1面1線の単式と1面2線の島式ホームを、天浜線が1面1線の島式ホームを有している。
ホームに降り、跨線橋を渡り山小屋風の駅舎に近付くと、何やら良いにおいが漂ってくる。
改札口への階段を上がると、「うなぎ丼」の立て看板が見える。
その先には「駅のうなぎ屋」の赤い看板が掛るカウンターがあり、浜名湖名産のうなぎを売る店が有った。
この沿線の各駅には、色々なお店が併設されているそうだ。
遠江一宮や二俣本町には蕎麦屋があり、天竜二俣では一日10食の限定駅弁も販売されると聞いた。
他にも手作りパン、ラーメン店、軽食喫茶・レストラン、中には薬局、歯科医院まで併設した駅も有るそうだ。
姫街道 気賀駅
気賀駅は細江の町の玄関口で、元々は国鉄の二俣線の駅として開業した。
嘗ては1面の島式ホームに2線を有し、行き違いの出来る駅であったが、現在使われているのは1線だけで有る。
プラットホームに覆い被さる、切り妻造りのスレート葺き上屋が、当時の様子を今に伝えている。
線路脇に咲き誇る花木たち、駅舎前の色とりどりの草花が、古風な駅舎に色どりを添えている。
この駅が更に華やぐのは、春の祭典「姫様道中」が開催される日だ。
気賀関所を出発した一行が、古式ゆかしく姫街道を練り歩く華やかな祭りで、この町を中心に繰り広げられる。
島式のプラットホームは、コンクリート造りで、長さは凡そ63m有る。
このホームと上屋、及び木造モルタル平屋造りの駅舎は、国登録有形文化財に登録されている。
ホームの大屋根は、複雑な木組みが支える木製で、圧倒的な存在感でその偉容を誇っている。
木製の改札口も年代を重ね、良い味を出し、懐かしさを醸し出している。
気賀駅近くには、旧東海道の脇街道、「姫街道」の名残が残っている。
江戸時代、幕府は街道の各所に関所を設け、「入り鉄砲に出女」を厳しく取り締まったと言われている。
特にここ遠州の新居の関所では、「出女」のみならず、「入女」の取り締まりも、厳しく行われていたと言う。
この「女改め」を嫌った婦女の要請で開かれたのが、「本坂道」、所謂「姫街道」で有る。
遠州の見附宿から三河の御油宿を結ぶ、東海道の脇街道で、浜名湖の北側の陸路を通る街道だ。
ノスタルジックな沿線風景
窯焼ピザの店が併設された金指駅の島式のホームでは、行き違いの停車が有る。
この駅のプラットホームやその上屋、構内に残る高架水槽は有形文化財に登録されたものである。
常葉大学前、都田と停車を重ねると次はフルーツパークで、駅の近くには農業公園が有る。
約160種の温帯性果物が栽培されていて、収穫体験が出来る「はままつフルーツパーク時之栖」の最寄り駅だ。
「天浜線」利用で入園すると、入場料が割引されるらしい。
雪解けの水を、満々とたたえて流れる天竜川を越えると、この路線の中心駅、天竜二俣駅に到着する。
天竜浜名湖鉄道の本社が有る駅で、観光やハイキング客などでさすがに乗降客も多い。
シーズンには賑わうと言う天竜舟下りの乗船地、船明ダムまでは、駅前から送迎バスが出ている。
駅舎やプラットホームとその上屋、駅構内にある転車台と扇形車庫まだ現役で活躍しているが、文化財だ。
ノスタルジックな雰囲気の構内は、文化財の宝庫で、曜日を決めて、見学ツアーも開かれている。
天竜浜名湖鉄道の本社が有る駅で、駅舎内ではラーメン店が営業している。
遠州森は、「遠州の小京都」と言われる町だ。
嘗ての繁栄を今に伝える蔵や神社仏閣が町内に点在し、レンタサイクルでの散策がお勧めらしい。
そんな町中のお寺の一つ、大洞院には、清水の次郎長の子分、森の石松の墓が有ると言う。
その墓が、商売繁盛や勝負事に御利益が有ると言う噂から、一時、墓石が削り取られる被害が続いたとか。
たった一両の、小さな気動車が走る路線は全て単線で、駅は殆どが無人駅だ。
その沿線には、春はさくらや菜の花が、夏にはむせ返る様な若葉が、秋には彼岸花が咲き誇る。
丘陵地に広がる茶畑等も目にすることがあり、車窓はローカル線らしい長閑な風景に癒やされる。
「天浜線」は、そこかしこに懐かしい昭和の香りが残る、ノスタルジックな路線である。
2010年12月、沿線11の駅舎や、各地に残る橋梁・隧道・施設など、36か所が国登録有形文化財に登録された。
花で彩られた沿線と、そういった施設を巡ると同時に、駅グルメを味わう楽しみもある。
フリー切符も発売されていて、近くを走る遠州鉄道やJRと組み合わせたフリー切符なども用意されている。
ここは、一日かけてゆっくりと、楽しんでみたいローカル路線である。
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