新穂高ロープウエー
高山本線の車窓からは、目的地が近づくにつれ、北アルプスの雪を戴いた山々の連なりが、くっきりと見えていた。
明日は朝から新穂高ロープウエーで山に登り、展望台からこれらの絶景を間近に眺める予定である。
ところが信じられない事に、こんな良い天気なのに、飛騨地方は今夜半から明日に掛けて雨の予報だ。
高山駅前に降り立ち、今夜の宿のある新穗高温泉行きのバス停に一度は並んだものの、どうにも落ち着かない。
明日は恐らく展望台は、すっぽり雲の中であろう、折角ここまで来たのに、雨と雲ばかりの景色を見て帰るのか?
バスでは無理だが、今ならタクシーを飛ばせば、最終のロープウエーには間に合うはずだ。
思い切って駅前からタクシーを飛ばした甲斐があり、どうにか16時丁度発の最終に間に合った。
奥飛騨温泉郷の観光名所の一つ、新穂高ロープウエーは温泉郷の最奥、中部山岳国立公園内に有る。
北アルプスの千石尾根に架けられた第一ロープウエーと、第二ロープウエーから成っている。
駅前にはビジターセンターが有り、ここには足湯などの施設が用意されている。
麓の新穗高温泉駅の標高は1,117mあり、ここからは二つのロープウエーを乗り継いで、山頂に向かう。
途中、鍋平高原駅で乗り継ぎ、少し歩いたしらかば平駅から標高2,156mの終点・西穂高駅を目指す。
鍋平高原駅行きの第一ロープウエーは、45人乗りのゴンドラで、ほぼ満員の観光客が乗り込んだ。
高度が上がる程に視界が開け、360度の雪景色が広がり、乗客からは思わず歓声が上がる。
混み合う狭いゴンドラの中を物ともせず、カメラを構え右に左に、前に後ろに、乗客の移動が激しい。
正面には屏風のような西穂高の山並みが、背後には笠ケ岳や錫杖岳の荒っぽい岩壁がぐんぐんと迫ってくる。
絶景に見とれ歓声をあげている間に、標高差190mを5分ほどで登り切り、鍋平高原駅に到着する。
ここは鍋平高原の自然散策路への拠点駅で、近くにはビジターセンター「山楽館」や山野草ガーデンがある。
館には源泉掛け流しの温泉、露天風呂「神宝乃湯」も併設されている。
ここまでは、麓からも車でも上がってこられるようで、駐車場も用意されている。
館の向こうには焼岳が、圧倒的なスケールで居座り、微かに噴煙を上げているのが望まれる。
あの穗高連峰を越えた向こう側は長野県で、有名な観光地・上高地だ。
実はこのロープウエー、当初は西穗山荘の南方鞍部を経て、上高地・河童橋の西方へ下る壮大な計画が有ったそうだ。
鍋平高原駅から、乗り継ぎのしらかば平駅までは、専用の通路が有り、歩いて1分ほどで行くことが出来る。
駅にはベーカリーショップや、テイクアウトショップが併設され、駅前には足湯もある。
第二ロープウエーは、その全長が2.6qでこれは東洋一、世界でも第二番目のスケールと言う。
そこに掛かるゴンドラは日本初の二階建て構造で、120人も乗る事が出来るそうだ。
ここからは、800m余りの高低差を7分ほどで登り、終点の2,156m、西穂高口駅に向かう。
山頂駅の温度計は、マイナス2.8度を指しているが、思ったよりは低くはないが、寒いことに変わりは無い。
室内でもこの気温で、外の寒さが思いやられる。
駅には日本一の高所にあるポストや、軽食・喫茶、テイクアウトの店などもある。
駅を出るとその周辺は、千国園地と言う原生林の樹間を縫って散策するコースが整備されている。
しかしこの時期でもまだ、2m以上もの雪が残り、雪で出来た迷路の様な、一面銀世界を楽しむ事が出来るそうだ。
散策には矢張り雪が溶けて、山野草や高山植物が咲き乱れる5月〜10月に掛けての頃が良いらしい。
北アルプスの絶景
猛烈な寒さを体感しながら、山頂駅屋上の展望台に上がる。
ふく風は弱く、日差しは充分にあり、空には雲も少ない素晴らしい青空が四方に広がっていた。
それでも凛と引き締まった空気は殊の外冷たく、刃物のような冷気が、防寒着の上からも刺すように迫ってくる。
360度の展望台を取り囲むように聳え立つ山々は、荘厳なまでに美しい雪化粧を施している。
そこにはフランス「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」の二つ星の評価に恥じない眺望が待ち構えていた。
正面には西穂高岳(2,909m)が、北穂高岳(3,106m)や奥穂高岳(3,190m)を背後に従えて聳えている。
そこからやや下がった手前の峰の中腹には西穂山荘の赤い建物が見える。
ここ山頂駅からは、穂高連峰・西穂高岳への上り口が有り、この山荘に通じているらしい。
目を左に転じると、真っ白な峰々の向こうに槍ヶ岳(3,180m)が望まれる。
特徴的な切立った山頂が雪を寄せ付けないのか、岩肌のままの岩峰が、青い空を鋭く突きあげている。
右手には焼岳が微かな噴煙を上げていて、その麓は上高地の大正池辺りだ。
更に遥かその先には乗鞍岳(3,026m)が有るはずだが、どの山がそうなのか、定かには判らない。
背後には、ロープウエーの索道越しに、蒲田川の谷を隔てた山々が、荒々しい岩肌を雪で隠し聳えている。
笠ヶ岳(2,897m)、双六岳(2,860m)、錫杖岳(2,168)の峰々だ。
その巨大な岩塊は、屏風のように切立って、見るものを圧するように圧倒的な迫力で迫って来る。
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