クルージングトレイン リゾートしらかみ
東能代は五能線の起点駅である。
ホームには、「くまげら」編成の列車を模した待合室や、五能線の起点駅標識などが有る。
この待合室では、写真展示などのイベントが催される事も有るそうだ。
秋田県の東能代と青森県の川部の間、147.2qを43駅で結ぶのが五能線である。
昭和の初期、当時まだ未成区間の五所川原と能代間の建設工事が始まった事から、五能線と呼ばれるように成った。
普通列車は数えるほどで、区間を通して運行される列車も極めて少なく、すこぶる便の悪い路線である。
また、途中駅での乗り継ぎも決してスムーズに出来ると言うものでもない。
それでもこの路線が評判を呼ぶのは、何と言っても白神山地と日本海の風光明媚な旅情が楽しめるからだ。
限りなく海に近いところを走り、奇岩怪石の海岸線を車窓から心ゆくままに堪能できる。
加えて、内陸部には世界遺産の白神山地や、名峰・岩木山が控えている。
更に名産のリンゴ畑など、津軽らしい車窓風景が楽しめるとあって人気の観光ローカル線である。
普通列車の便は悪いが、観光路線らしくここには、JR東日本が誇るリゾート列車が投入されている。
大きな窓で、展望ラウンジや個室風のボックス席を備えた、「クルージングトレイン リゾートしらかみ」だ。
現在、全席指定の快速列車(指定席券510円)、「青池」「くまげら」「橅」の三編成が運行されている。
車内では、絶景ポイントでの観光案内がアナウンスされ、減速運転のサービスもある。
又折に触れ、津軽三味線の生演奏、語り部による昔語りなどを行うイベントステージなども催される。
沿線の各駅では、訪れる観光客向けに色々な観光メニューも用意されているらしい。
車内で発行される「リゾートしらかみ・乗車証明書」を提示すれば、観光施設の料金割引きの特典も有る。
あきた白神駅
横殴りの雨が、激しく車窓を叩いている。
五能線の普通列車が東能代を出て暫くすると、左手に日本海が見え始め、時を同じくして雨も降り出した。
この日は朝から弱い雨が降ったり止んだりしていたが、ここに来て本降りで、かなり強い風も吹き始めたようだ。
はや夕暮れの色に染まり始めた日本海が、白波を立ち上がらせ、海底の砂を巻き上げ激しく荒れている。
東能代からは40分ほどであきた白神駅に到着する。
ここは五能線観光の拠点の一つで、快速列車「クルージングトレイン リゾートしらかみ」が停車する。
単式のホームに1線を有する地上駅で、委託ながら駅員が駐在し、観光駅長もいるようだ。
プレハブの小さな駅舎があるが、比較的新しく、最近作られたように見受けられる。
列車が到着する頃合いを見計らうように、幸いにして雨も上がり風も止んでくれた。
目の前は並走する国道101号線が流れ、海側に向け屋根付きの跨線橋がそれを跨いでいる。
今晩の宿、「八森いさりび温泉・ハタハタ館」は、この駅前、跨線橋を渡り降りた先にある。
八森いさりび温泉・ハタハタ館
国道を越える跨線橋を渡れ降りると広い駐車場で、今晩の宿はその先にある。
「八森いさりび温泉・ハタハタ館」には、産地直売所「ぶりこ」が併設されている。
新鮮野菜や採れたて魚介類の販売所で、名物はハタハタ焼きや、木の実・さるなしのソフトクリームが人気らしい。
隣には「あきた白神体験センター」も有り、白神山地や目の前の海での体験メニューなどが沢山用意されている。
「御所の台ふれあいパーク」は、春には桜の名所として知られ、4月中旬頃には多くの花見客で賑わうと言う。
ここにはオートキャンプ場、テニスコート、パターゴルフ、バッテリーカーコースなどの施設がある。
駅に隣接して管理センターが有り、ここでは自然酵母を使ったパン作りも楽しめる。
この宿の売りは、何と言っても雄大な日本海の眺めである。
特に夕暮れ時、海に沈む太陽を眺めながら、塩分を含んだナトリウム硫酸塩・塩化物泉の入浴は最高だ。
ハタハタ漁の舟を模した木造りの露天風呂・舟風呂が雰囲気と安らぎを演出してくれるとして評判を呼んでいる。
サウナや岩盤浴場も備えていて、日帰り入浴も出来る。
ここ八森沖には、白神山地から流れ込むミネラルたっぷりの水で豊かな漁場が広がっている。
昔からハタハタの宝庫と成っていて、民謡・秋田音頭で「八森ハタハタ・・・」と唄われている場所だ。
館内のレストランでは、八森漁港で水揚げされた新鮮な魚介類を使った料理が提供される。
日本海に沿って 憧れのローカル線
前日の嵐が嘘のように、今日の空は白い雲が大きいものの青く輝いている。
あきた白神駅前に「ハタハタの里 案内図」が掲げられているが、よく見るとこの駅は地図に記載されていない。
実はここは、五能線中では二番目に新しい駅で、平成9(1997)年、町の強い要望により設置された。
もともとこの辺り周辺にレジャー施設が揃っていたからだが、残念ながら列車を利用する客は多くは無さそうだ。
五能線では八森辺りから左手に海が見え始め、車窓は限りなく海に近くなり、海辺が手に取るように見える。
この先の鰺ケ沢までの約80キロ余りの間で、海に抱かれるように、海岸線を忠実になぞるように走る。
途中の岩舘は、秋田県では最北の鉄道駅で、ここには全ての列車が停車する。
駅から、歩いて10分ほどのところには有名な岩舘海岸がある。
海岸にそそり立った岩が、まるで城塞(館)のように見えることから名付けられたと言う。
空には、少し灰色がかった大きな雲も多いが、それでもその奥には澄んだ青色の空が広がっている。
海はどこまでも碧く輝いて見え、遠くの水平線が、緩く大きな弧を描いて見えている。
岸辺には奇岩怪石も多く、それに波が絡まり、打ち砕かれて白く波立ち、そのコントラストが実に美しい。
夏の日本海は穏やかとの印象を持っていたが、どうやらそうでも無いらしい。
岩館から10キロ余り先が大間越、更に白神岳登山口、松神と限りなく海に近い駅々が続く。
どこも無人駅で、駅舎すら無く小さな待合室だけの駅も多く、過疎の地のローカル線そのものである。
こうして折々停まる駅の近くには小さな集落が広がり、周りには良く手入れされ、豊かに実った水田や畑もある。
厳しい地勢の中で荒れ地も多いようだが、それでも連綿と普通に生活が営まれている様子が窺える。
白神岳登山口では、白神岳を目指すのか、登山者がたった一人無人の駅に降りて行った。
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