観光路線 富良野線
富良野線は、旭川と富良野を結ぶ54.8Kmの路線である。
旭川の駅には富良野線の観光ポスターの露出が多く、さすが人気の観光路線だ。
ホームに入って来た列車は、この辺りでは珍しくワンマン運転ながら2両編成である。
この列車が旭川を発車する頃には、大きな荷物を持った外人グループ、若いカップル、家族連れ等で満席になった。
この地は、テレビドラマ「北の国から」の舞台として、全国的にも知られるようになった。
また、テレビなどのCM,ポスターや絵葉書でも、その雄大で美しい景色が紹介されることも多い。
そんなことから知名度が上がり、人気の観光地としての地位を確立してきたようだ。
沿線にも、広大な花畑や緑豊かな牧場、スキー場など多くの人気施設が点在している。
また町々にも、チーズ工房、ワイン工場、資料館や美術館等が立地し、観光客を引き付けているようだ。
上川盆地の平野に広がる北海道第二の都市・旭川を出ると、近郊の町並みが広がる中、国道237号と並走する。
西聖和あたりを過ぎると周辺の景色は変わり、富良野らしい丘の畑の風景が広がり始める。
晴れていれば、車窓からは雄大な十勝連峰の山々も遠望できると言う。
丘の町・美瑛
千代ヶ岡で列車が行き違い、その先で北美瑛を過ぎると25パーミルの急坂上りが待ち構えている。
ここを登り終えると丘の町、美瑛に到着で、旭川からは30分ほどの距離である。
美瑛駅のホームには白樺が植えられていて、その根元には草花も咲き乱れ、いかにも北海道らしい。
そんな駅の構内では、メルヘンチックな跨線橋も色を添えていて、特に女性に人気と言う、美瑛の玄関駅らしい。
安山岩の「美瑛石」で作られた美瑛の駅舎は、名駅舎の誉れも高い昭和27年に造られものだ。
ここ美瑛は、寒暖の差の大きい丘の町で、メロン栽培に適した地だ。
また、広大に広がる緩やかな丘陵地では、小麦・マメ・じゃがいも・とうきび・ビートなどが栽培されている。
この丘はまさに、食の宝庫でも有る。
美瑛らしい風景を満喫したいなら、レンタサイクルを借りるかして、郊外に足を向けないといけない。
観光のシーズンなら駅前から、JR利用者専用の「ツインクルバス美瑛号」(ワンコインバス・500円)も出る。
又、鉄道の利用者に向けては、観光シーズンには、「富良野・美瑛ノロッコ号」が運行される。
いずれにしても駅の近辺には、取り立てて見るべき景観は無いようだ。
従って美瑛からこの先の富良野にかけての景観を楽しむなら、これらを利用する事になる。
富良野・美瑛ノロッコ号
カラフルに特別塗装されたディーゼル機関車に牽引された「富良野・美瑛ノロッコ号」が入線した。
正面には、15周年特別仕様のヘッドマークが誇らしげに掲げられている。
トロッコ仕様に改造した客車は3両編成で、機関車のすぐ後ろが指定席(300円)、他は自由席だ。
夏のシーズンにはもう一両、最後尾に自由席車が増結されるらしい。
車内には、やや大きめの木製シートが設けられている。
片側は窓に向けて、反対側は木製のテーブルを挟んで向かい合うような配置だ。
窓は大きくて、開放的で、充分な視界を確保していて、開閉できるガラス窓となっている。
車内には売店も有り、客室の一部にはストーブも置かれている。
列車が動き出すとすぐに、乗客には「乗車証明書」が配られる。
最初の停車駅は、無人駅の美馬牛で、ホームには趣のある小さな木造駅舎が残されている。
駅前には商店も有り、電動のレンタサイクルを借りることが出来ると言う。
ケンとメリーの木、セブンスターの木、四季彩の丘、拓真館等を訪ねるなら、これらを利用するのが良いらしい。
観光の駅らしく、ここでは何人かの乗客が乗り降りした。
車窓には北海道らしい、大きな丘が緩やかにうねりながら、いくつも重なりあう風景が展開する。
絶景ポイントでは、徐行運転も有るが、この時期は残念ながら畑を彩る花の群落を見ることは出来ない。
途中車窓から、広大な畑の中に立つ「富良野原野開拓の碑」が見えた。
この辺りは富良野川の上流地域で、その昔は、樹木も少ない一面のススキの原であった。
広大なぬかるみの続く湿地帯で、明治の後半から大正にかけて行われた開拓は、難渋を極めたそうだ。
当時は懐疑的であった排水溝の掘削工事の完成により、荒れ地は次第に田畑に改良されていったと言う。
上富良野駅は、相対式ホームを持つ地上駅で、富良野観光の拠点駅の一つだ。
その次のラベンダー畑駅は、美瑛の丘が花に彩られる頃、臨時に開設され駅で、一部の列車はここに停車する。
臨時駅ながら開設時は駅員もいて、観光客の利用が非常に多い駅である。
そんな利用客の目的は、有名な「富田ファーム」で、そこまで徒歩で7分ほどだそうだ。
トロッコ列車の車内を吹き抜ける風は、冷たいほどに爽やかで、気持ちが良い。
花のない時期とは言え、車窓に展開する風景は、如何にも北海道の大自然の感が有り申し分ない。
車窓左手には、晴れていれば富良野岳の向こうに噴煙を上げる十勝岳を望むことも出来るらしい。
しかし、生憎とそれは低い雲の中に隠れたままで、姿を見せてはくれない。
前方には芦別岳の雄姿が見え隠れし始めると、終点の富良野は近い。
北海道のヘソ 富良野駅
近代的な駅舎の建つ中富良野を過ぎると、やがて終点の富良野に到着する。
富良野地方の中心駅らしく、2面の島式ホームに4線を有する大きな駅で、駅員も配置されている。
根室本線が乗り入れ、特急の停車駅でもある。
近頃では駅の売店のコンビニに置き換わりが加速しているが、ここにはまだキオスクも健在だ。
又、立ち食いのそば・うどんの店も営業を続けている。
富良野は、東経142度30分、北緯43度20分に位置する北海道の中心らしい。
大正時代に2年間、京都帝国大学の博士がこの地を中心地点として、重力や経緯度の研究をし、明らかにした。
その「北海道中央経緯度観測標」が、駅から徒歩10分ほどの富良野小学校校庭にある。
富良野の町
富良野の駅から歩いて5分程のところに「北の国から資料館」が有る。
煉瓦造りの大きな建物で、以前は地元農協の駅前倉庫として使われていたものだ。
テレビドラマ「北の国から」は、1981年10月に連続ドラマとして放映された。
その後、「2002遺言」までの21年間、折に触れ放送された作品が感動を呼び、全国のファンを魅了してきた。
ここには実際の撮影で使われた大道具・小道具や衣装、作家の直筆原稿やドラマの台本などが展示されている。
シリーズごとに分けて展示されているので、テレビ番組の記憶や、黒岩一家の21年を懐かしく辿ることが出来る。
町中に建つ、「ふらのマルシェ」を、訪ねてみた。
ここは富良野の食をイメージした、約2,000坪と言う広大な、モール街のような商業施設だ。
地元産の農産物品を売るマーケットやテイクアウトの店、カフェやスイーツの店、お土産屋等が軒を連ねている。
休日になると、中央の広場では様々なイベントも開催されるらしい。
ここは観光バスの立ち寄りスポットになっている。
この日は駐車場に入りきれない大型バスが、前の道路に何台も連なって客を下ろしていた。
買ったものはすぐに送ることが出来るせいか、中には箱売りの商品も沢山あるのがこの店の特徴のようだ。
施設横の東五条通を真っ直ぐ10分ほど歩くと駅に戻ってくる。
町中には、洒落た食事処も多く、地元産の野菜を使ったカレーや、アスパラ天丼が人気らしい。
今売出し中の、ご当地グルメ「富良野オムカレー」の看板や、黄色い幟端を掲げる店も沢山ある。
北海道は、ジャガイモも名産で、コロッケを売り物にする立ち食いの店も多い。
乗り換えの僅かな時間を利用して、慌ただしく町中を巡り、駅まで戻ってきた。
駅を降り立ったときは気付かなかったが、駅前にレンタサイクルの店があった。
自転車なら、もう少し余裕を見て回れたのに・・・と思ってももう遅い。
駅前広場で、今来た道を振り返ってみる。
正面にはどっかと座る芦別岳が、山頂付近を少し雲に隠し、その雄姿を見せていた。
しかし富良野岳や十勝岳は、残念ながら鈍色の雲の中で、とうとう最後までその姿を見せてはくれなかった。
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