「国民保養温泉」四万温泉
群馬県の北西部に位置する「四万温泉」は、「国民保養温泉」の第一号に指定された歴史ある温泉地である。
青森県の酸ヶ湯温泉、栃木県の日光湯元温泉と共に、昭和29年に指定を受けている。
その湯は四万もの病に薬効が有ると言われ、地名の由来となっている。
『温泉利用の効果が充分期待され、かつ健全(歓楽的な色彩の無い健康的)な温泉地』
「国民保養温泉地」とは、数ある温泉地の中で、このような条件を備えている地域を環境省が指定するものだ。
温泉としては、泉効が顕著で、湧出量が豊富にあること、適度な温度を擁していること。
加えて温泉地の置かれている地理的な状況やその環境、交通の利便性の良さも考慮される。
更に災害に対する備え・安全性などを総合的に判断し選定されるもので、現在全国の91地域が指定されている。
国道353号を四万大橋のところで逸れ、山里を流れる四万川に沿って、川を遡る。
温泉街はここら当りから始まり、温泉口、山口、新湯、ゆずり葉、日向見の五つの地区に分かれて開けている。
温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉だ。
神経痛・リウマチ・皮膚病等に効能があり、入浴は肌に良く、飲用は胃腸病・食欲増進に良いとされている。
温泉街には、二か所の飲線場も設けられている。
ここには日帰り入浴の出来る「清流の湯」(500円)や、無料で入れる「上の湯」など立ち寄りスポットも多い。
特に「国民保養温泉」と言うだけあって、「河原の湯」や「御夢想の湯」なども無料で入れる立ち寄り湯である。
他にも町営の入浴場などがあるが、おおむね500円程度の安い料金で入れるのが嬉しい。
又「山口川音の足湯」「ゆずりは足湯」など、温泉街には四カ所もの足湯もある。
無料で楽しめる湯が多いが、共同湯は利用時間が限られているところもあるので注意が必要だ。
いずれにしても、ここでは、様々なスタイルの入浴を楽しむことが出来、温泉巡りが楽しい。
温泉街の中ほどに、観光客がそぞろ歩く姿も目立つ、桐の木平商店街と言う通りがある。
この地区の中心らしく、大小の旅館や酒屋、土産物屋、食事処などに混じり郵便局などが混然とした通りだ。
中ほどには飲めば胃腸病に聞くと言う「塩の湯飲泉所」もある。
そんな一角から、香ばしく食欲を誘うのが群馬県のソウルフード、「焼きまんじゅう」だ。
米と小麦を練り合わせ丸め、それを蒸して作ったパン様のまんじゅうを竹串にさし、火であぶる。
仕上げにみそだれを付けさらに焼き、僅かな焦げ目を付けると出来上がりだ。
そのタレの焦げ加減が何とも香ばしく、濃厚で、一口頬張ると口の中ではそのうまさが広がり、後を引く。
熱いうちに、フーフー言いながら食べるのがなお一層美味しさを引きだしてくれる。
温泉街の中心地・新湯地区
温泉街の中心地、新湯地区に架かる月見橋を渡ると、河原には広大な駐車場も用意されている。
そこから少し上流に向かって歩くと、四万川と新湯川の出合う河原に「河原の湯」が有る。
道路の下に潜り込むように建てられた、無料で利用できる共同湯の一つである。
石造りの小さな建物は、一見洞窟のように見える雰囲気が人気で、小さな浴槽にはいつも人が溢れている。
「四万温泉」は、大型のホテルや和風の旅館、民宿、ペットと泊まれる宿などが居並ぶ、歴史ある温泉地だ。
飲食処やお土産屋さん等も多く、レトロな商店街も有り、多彩な施設で広範な温泉街を形成している。
その中の一つ日向見地区は、四万温泉発祥の地と言われている。
又、新湯地区の落合通りは、どこか昭和レトロな雰囲気を感じる通りで、ここでは時がゆっくりと過ぎている。
温泉まんじゅうを売る土産物屋、酒場、飲食店や喫茶店、懐かしいスマートボールの出来る遊戯場も有る。
少し前までこの通りには、射的やパチンコ、スマートボールなどの遊技場が5軒ほど有ったらしい。
しかし、今ではこの「柳屋」が一軒だけ残り、頑なに昭和を守り営業を続けている。
日本最古の湯宿・積善館
「河原の湯」のある萩橋を渡り、暫く進むと赤い橋の向こうに、古風な佇まいを見せる旅館が見えてくる。
それは威風堂々とした風格ながら、どこかメルヘンチックな不思議な雰囲気を醸し出している。
それが、四万温泉を代表する見所の一つ、「積善館」で、勿論宿泊も、入浴も出来る現役の高級温泉宿だ。
江戸は元禄の時代に開業した湯治宿で、300年の歴史を誇る、現存する日本最古の湯宿でもある。
昔は、一階部分を家族が使用し、二階を湯治客に貸していたらしい。
その名残の外から直接二階に上がることのできる階段が、玄関のすぐ脇に今も残されている。
赤い慶雲橋を渡った右手が、立ち寄りのできる「元禄の湯」が有る建物である。
昭和5年に建てられたもので、一階は大正浪漫を感じるモダンな洋風だが、その上階はシックな和風の客室だ。
赤い橋とこれらの建物群は、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」の「油屋」のイメージモデルの一つと言われている。
建物は増改築を重ね、山側に向かって「本館」「山荘」「佳松亭」が造られている。
湯治棟である「本館」は、日本最古の木造宿建築と言われ、県の登録重要文化財に指定されている。
昭和11年に建てられた「山荘」は、旅館として使われていた、国の登録有形文化財だ。
「元禄の湯」の、木造の扉を押し開けて中に入ると、一段と高いところに脱衣所が設けられている。
浴室との間に仕切りはなく、ただ棚を置いただけのシンプルな作りで、一昔前のスタイルそのままである。
石段を降りるとタイル張りの洗い場が広がり、石造りの5つの浴槽が掘られ、掛け流しの湯が溢れている。
浴室にはカランもなく、必要な湯は直接湯船から組み上げるスタイルだ。
今で言うサウナであろうか、温泉のルーツと言われる蒸湯も有る。
この蒸湯は、かつてはどこの温泉にも有ったらしいが、今に残るのはここだけと言う。
タイル張りの床の、広い室内は天井が高く、大きなアーチ形の窓がモダンな印象的だ。
開放された窓からは、明るい日差しが一杯に差し込み、目の前を流れる川からは、気持ちの良い風も流れてくる。
浴槽の底から湧き出る温泉が湯船を溢れ、流れ出る音に混じり、せせらぎも聞こえてくる。
このほかにも本館内には、利根川の青石で造られた館内唯一の混浴岩風呂もある。
脱衣所は男女別になっているが、浴室同様余り広くは無い。
少し大きめな家族風呂と言った感じで、家族同士なら兎も角、他人との混浴となると少し勇気がいるかも(?)
そのせいか男女別の専用時間帯が決められている。
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