名湯・草津温泉
生憎の雨降りである。温泉街を流れる川の岸辺の柳並木に、そぼ降る雨・・・なら風情もあろう。
だが時折思い出したように、半端じゃない降り様を繰り返すこんな日では、温泉情緒も何も有ったものではない。
折角楽しみに訪れた温泉なのに、傘の手放せない日に成ってしまった。
夕方近く、天下の名泉・草津温泉の湯畑に到着した。
それでもさすがに天下の名湯、日本三名湯の一つに数えられる観光地・草津の人出は多い。
この雨の中で、何かイベントでも開催されているらしく、特設のステージを大勢の立ち見客が取り囲んでいた。
草津温泉は標高が1,156mの高所にあり、それとこの雨降りとあって、夏の夕方というのにとても肌寒い。
それでも温泉名物の「湯畑」の周りは、寒さも雨をも厭わない観光客で溢れ返っている。
雨にけむり、白い靄のような湯気が上げる湯畑は、まるで雲の中のようで、全てがシルエットだ。
それでも風の影響か、時折訪れる晴れ間のような瞬間視界が開け、そのダイナミックな雄姿を見せてくれる。
毎分4,000リットルもの温泉が、木の樋を滝のように流れ下る様は、迫力満点で見るものを圧倒する。
草津白根観光ホテル・櫻井
この日の宿は少しだけ奮発し、「草津白根観光ホテル・櫻井」に予約を入れている。
とは言え贅沢は出来ず、この宿では最安値に位置するプランなので、食事は朝夕とも大広間でのバイキングだ。
それでも多少、リッチな気分に触れることは出来る。
この宿には草津でも最大級と言われる、長さ30mの大浴場があり、それを目当ての宿泊でもある。
流石にこの草津の温泉街は賑やかで、お土産や食事処、飲み処など沢山の店が立ち並んでいる。
共同浴場も十数か所も有り、また源泉の一つ、西の河原には巨大な露天風呂などが有り湯巡りも楽しめる。
しかし雨は止むどころか益々激しくなっている様子で、入浴どころか街に繰り出すことも出来そうにない。
夜はおとなしく旅館で過ごすことに成りそうだ。
湯もみショー&中国雑技ショー
宿泊客が夕食を終える頃合いを見計らって、2階のお祭り広場ではショーが行われる。
草津名物の「湯もみショー」は、泊まり客も湯もみの体験をする事が出来る。
春爛漫に咲き誇る桜をイメージした「桜太鼓ショー」では、迫力有る和太鼓の演奏が繰り広げられる。
何れも出演しているのは、ホテルの従業員達らしい。
この日は、舞台付きのコンベンションホールで、「中国雑技ショー」が開催されていた。
お祭り広場のショーが終わると、頻りに案内が流れ、お客を離さない工夫がされている。
こちらは、別途入場料金が必要で、事前申し込みの受付順に、前からテーブル席が用意される。
「フラフープ」や「ロープ技」、「自転車曲乗り」や「変面」等、ショーは1時間半余り繰り広げられる。
ホテルや旅館では、宿泊客を館内に取り込み、館内で楽しませる仕掛けを構えているところも少なくはない。
このような顧客サービスに対する企業努力には敬意を表するが、果たしてこれで良いのかは甚だ疑問もある。
宿泊客が館内だけに留まれば、当然温泉街に客足は途絶え、街全体の活性・繁栄はどうなるのか。
和倉温泉には、マスコミ等が日本一と持て囃す有名旅館があり、館内には色々なエンターテイメントがある。
結果、客はこの宿に泊まることを目的に行くことに成り、この温泉地に行くのでは無いから、街を出歩かない。
旅館の駐車場だけは何時も車が溢れているのに、温泉街から人が消え、店は潰れ、街は荒んでしまう。
草津がまだそれ程まででは無いのは、入り込み観光客の絶対数が、圧倒的に和倉より多いからであろう。
今晩のように冷たい雨が激しく降り、肌寒い日に、このように館内で楽しめることは有り難くはある。
であっても、街を出歩けない物足りなさも有り、複雑な心境でショーを眺めているのである。
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