土佐 龍温泉・三陽荘にて

 

 宇佐湾を跨ぐ宇佐大橋の登りは結構きつく、800m程だが渡り終えるのに10分ほどかかってしまった。

橋を渡れば、後は海沿いの道を進むだけだ。

小さな入江を幾つも曲がりながら進むと、やがて今晩の宿、土佐龍温泉・三陽荘が見えてくる。

 

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

 

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

 

龍の浜と言われる、美しい海岸の前に今晩泊まる宿は建っている。

玄関を入った本館正面奥に一願成就の黄金の大師像を祀っている。

願を掛ければ願いが一つ叶うと親しまれ、ここもお遍路さんには評判の良い宿らしい。

ここにはお大師さんが、杖で示された場所を掘り下げたら噴き出たと言う45度の温泉が有る。

ナトリウム・カルシウム塩化物温泉の少し塩辛い温泉だ。

 

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

 

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

 

入浴後はフロントで縫い針を借り、最早恒例になった肉刺の手入れをする。

フロントが貸してくれた消毒液を付けた針で水泡を破り、ティッシュペーパーで慎重に水を絞り出す。

その後消毒液をかけ絆創膏を貼り、その上から幅広のテープでぐるぐる巻きに固めてしまえば治療は終わりだ。

こうして歩くようになって以来、足の裏に痛みを感じることは極めて少なくなった。

 

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

 

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

土佐龍温泉・三陽荘

 

夕食のお食事処のテーブルには、豪華に海の幸、山の幸がたくさん並べられている。

何時ものことながら、お遍路さんパックは値段の割にはお値打ち感があり、ありがたい。

食事処にはこれまでに同宿だった、或は道すがら最早顔見知りとなった遍路が、大勢揃い話が弾む。

歩き遍路と言う共通項だけで結ばれる、知らない者同士の一期一会の会話だが、何時までも尽きる事が無い。

 

 

横綱を育てた石の階・青龍寺

 

夏のような暑い日が続いていて、初日から今日まで最高気温が毎日1度ずつ上がっている。

今日の最高気温の予想も34度と言い、そのせいかすでに朝から南国の容赦のない暑い日差しが照りつけている。

宿の前の海沿いの道を暫く歩き、少し先でそれを離れ、山に向かう道に入る。

道端には赤い前垂れをしたお地蔵さんが置かれていて、それに導かれて進むのでここは迷う心配がなさそうだ。

 

青龍寺

青龍寺

青龍寺

 

青龍寺

青龍寺

青龍寺

 

やがて山裾に赤い多宝塔が望まれるようになり、その周辺に甍を構える本坊や納経所らしい建物が見えてくる。

36番札所・青龍寺の本堂は、納経所の前に延びる長い石段の遥か先に有る。

先の横綱・朝青龍が明徳義塾高校時代、ここを上り下りして足腰を鍛えたことで知られる石段だ。

その四股名も、この寺に因んで付けられたことは、広く知られている。

 

青龍寺

青龍寺

青龍寺

 

青龍寺

青龍寺

青龍寺

 

山門に続くその石段を登ると、その途中左に不動明王の石像が祀られた細い滝が落ちている。

信者が滝行をするところだと言う。

途中には朱塗りの三重塔があり、緑濃い山を背に立つ姿がとても印象深い。

更にその先の仁王門を潜り、そこから百数十段の石段を登った先にようやく本堂が姿を見せる。

 

青龍寺

青龍寺

青龍寺

 

青龍寺

青龍寺

青龍寺

 

青龍寺

青龍寺

青龍寺

 

 

打戻り

 

この日の36番は「打戻り」をするので、宿に荷物を預けたまま札所に向かった。

「打戻り」とは、札所の行き来に同じ道を使う事を言うが、荷物を持たないで歩けるのは本当にありがたい。

実は次に目指す第37番札所・岩本寺迄は、56キロも有り、そのルートは内ノ浦湾を挟んで二つ有る。

 

一つは36番を打って、そのまま横浪スカイラインを行く山岳ルートだ。

距離は短いが、自動車道なので意外にアップダウンが激しく、歩きには厳しいと言う。

もう一つは一旦宇佐大橋まで戻り、海岸に沿った海沿いルートで、ほぼ平坦な道だが2キロほど距離が長くなる。

 

打戻り

打戻り

打戻り

 

打戻り

打戻り

打戻り

 

先日雪蹊寺門前で泊まった折、宿の女将は夕食時に、こんなアドバイスをくれていた。

36番からは、打ち戻りで宇佐大橋まで戻った方が良い」

「スカイラインはお店が何も無いから、食事や水分補給に苦労する」と言っていた。

その勧めに従い、「打戻り」で36番を終え宿に戻り荷物を引き取り、再び昨日来た道を宇佐大橋まで戻る。

 

 

どうして歩くの?お遍路さん

 

宇佐大橋を渡ったところまで戻ると道は県道23号に合流する。そこを昨日来た方向とは逆に左折する。

左手に内ノ浦湾の静かな海を見ながら、淡々と続く自動車道で歩道を探しながらの歩みが続く。

 

まだお昼前だというのに、それにしても途轍もなく暑くなってきて、少し休みたいところだが、適当な場所がない。

そんな歩きの途中小さな集落の中で、やっと食料品店が見つかった。

前後して歩く遍路の格好の休憩所になり、店に入るなりその手が一様に迷いもなくアイスキャンデーに延びる。

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

道が海から少し外れると小さな峠道になり、暫く登ると左手の小学校の校門前にこんな掲示が有った。

『お遍路さんへ 結願めざしてがんばってください』

『教えてください。どうして歩いているのですか?』

 

「どうして歩いているのだろう?」等と、今まで真剣に考えたことも無かった。

格段の信仰心が有るわけでもないが、どうせウオーキングするなら八十八か所を周ってみたいと思ったから。

たまたま一緒に歩こうという相棒が一人見つかったから。

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

暑くて無性に喉が渇き、500のペットボトルがすぐ空になってしまう。

自販機を見つければペットボトルを補充する。

お店を見つければ、ほてった体に良いとアイスキャンデーを買い求めそれを食べながら歩いてきた。

 

そんな途中内ノ浦の集落で珍しく喫茶店を見つけた。

この先で食べられる保証も無いので、お昼にはまだ間が有るが、休みながら昼を取ることにする。

冷房の効いた店内はまるで別世界、天国だ。

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

少し早い昼食を手短に済ませ、再び遍路道に戻る。

額に汗を浮かべながらそこから更に6キロ程歩くと、須崎の集落に遍路小屋が有った。

こんな暑い日は休み休み行くより仕方なく、先ほどから何度も小休止を取っているが、ここでも一休みだ。

小屋の壁に温度計が掛けられていて、見れば何と、35度を示しているではないか、道理で暑いはずだ。

こんな暑い中を、なんで歩いているのだろう・・・?ここでも考えてしまう。

 

思い返してみると、大した理由もなく歩き始めている。

しかし歩いてみるとそれは新鮮で、古色の寺も歴史謂れを知れば案外面白いし、そこに至る景色も美しく見て楽しい。

一期一会とは言え、たった一つの共通項だけで、見ず知らずの他人と親しくなり、殊の外会話が進む。

これが何とも心地よく、面白いのだ。

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

どうして歩くの

どうして歩くの

どうして歩くの

 

住友大阪セメントの大きな工場の前を過ぎると、大間の町並みに入ってくる。

JR大間の駅で、これまで後になり先になりして猛暑の中歩いてきた遍路が帰ると言うので別れを告げる。

今晩の宿迄は、ここから先さらに4キロ程を歩く事になる。

土佐新庄駅を過ぎた辺り、併走する高知自動車道の終点近くに大きな道の駅があり、宿はそれを目印に歩く。

 



 

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