九州新幹線・鹿児島ルート
平成23(2011)年3月12日、あの大震災の翌日に、九州新幹線・鹿児島ルートはひっそりと開業した。
九州の西側を縦断するように、博多と鹿児島中央間を256.8キロで結ぶ路線で、九州の大動脈である。
と同時に、関西圏とは直通する列車も設定されていて、新大阪乗換えながら、首都圏との距離が随分と縮まった。
「みずほ」「さくら」「つばめ”」の、三つの愛称で呼ばれる列車が運行している。
この日始発の博多駅のホームは、早朝にも関わらず随分と込んでいた。
特に自由席の乗車口には、列車の到着前から既に長い行列が出来ている。
早朝で流石に家族連れは見かけないが、サラリーマン風の客に混じり、旅行鞄を下げた観光客らしき姿も見える。
開業して凡そ半年が経過したが、まだまだ新幹線の開業ブームは衰えてはいないようだ。
2011年5月から同年12月の間の新幹線による経済効果は、凡そ263億円と言う試算も発表されている。
ホームに列車が静かに入って来た。
さすがに人気の新型車両、列車が停車すると、すり寄って車内を覗き込み、カメラや携帯を向ける人も多い。
その顔は、輝くような純白のロングノーズだ。
九州新幹線 800の文字、ボディには金と赤いラインを引いて飛び立つツバメが描かれている。
引き締まったフォルムに、力強く駆け抜ける新幹線のイメージを描き出している。
最速「みずほ」は、新大阪・鹿児島中央間を3時間45分で駆け抜ける。
「つばめ」は各駅停車として、また博多・熊本、或いは熊本・鹿児島中央間の区間運転として運行されている。
名称が公募で決められた「さくら」は、博多から熊本まで僅か40分で、主に鹿児島中央間で運行されている。
その内の何本かは、山陽新幹線に乗り入れ、新大阪を始発・着としている。
東海道・山陽新幹線で言うところの「ひかり」と同等で、九州新幹線の「顔」とも言える列車である。
「さくら」は、熊本から先は各駅停車となるが、それでも終着駅までは1時間程の所要だからさすがに速い。
和みの和テイスト
車内で目を引くのは、各車両のシート地の多彩なことである。
黒っぽいワインレッドの本革(だと思うが・・)があれば、西陣織の市松模様もある。
少し派手すぎるのでは・・と思える程鮮やかなアイビー柄もある。
無柄のシートもそれぞれ色が違い、飽きさせない工夫がされている。
何よりも座席が2列×2列シートで、ゆったりとした快適な空間の演出がなされているのが嬉しい。
座席の背もたれ、窓のブラインド、その下の台、ひじ掛けと収納されているテーブルも、木製だ。
デッキの手摺や握り棒も木製、洗面室には縄のれんがかけられていて、落ち着いた和室にいるような雰囲気だ。
車両内部の所謂妻壁の部分には金箔がはられ、アクセントに小さなディスプレイ額が掛けられている。
窓から差し込む光が金箔に当たり、鮮やかにそして煌びやかに、輝いて見える演出が成されている。
鹿児島中央駅
「鹿児島中央駅」は、九州の南の拠点駅で、鹿児島本線、日豊本線、指宿枕崎線の結節点である。
更に今では、九州新幹線・鹿児島ルートの終着駅ともなった。
嘗ては「西鹿児島」と呼ばれていて、大正2(1913)年10月に「武」駅として開業したのが始まりである。
嘗て本州から西に向かう長距離の特急や寝台列車等、多くの優等列車がこの駅に向けて走っていた時代が有った。
九州の南の果て鹿児島の、更にその“西”をイメージさせる「西鹿児島」は、旅路の果てを彷彿させていた。
今、「鹿児島中央」と呼ぶ駅名からは、そんな寂しさは微塵も感じられず、むしろモダンな感じがする。
新しい駅は、在来線の地上駅の上に、T字のように行き止まる形で新幹線の高架駅が造られている。
最上階の3階がホームに成っていて、2階に降りると明るく広い開放的なコンコースが有る。
乗降客数や取扱収入が上位に位置する駅らしく、土産物店や飲食店等が軒を連ね、多くの人で賑わっている。
中央大階段を降りると、駅前にはホテルや商業施設のビルが立ち、多くのバスや市内電車が発着している。
駅前からは、駅前商店街(一番街)がアーケードで繋がっている。
元々は、鹿児島の玄関駅前で行われる「朝市」として、昭和の時代より発展してきた歴史がある。
近くには、鹿児島銘菓「かるかん」を売る、「蒸気屋 かるかん本舗」の店もあり、出来立てが味わえる。
かるかんは、300年以上の歴史を持つ、薩摩を代表する郷土銘菓である。
東洋のナポリ
駅舎左手に「アミュプラザ鹿児島」があり、最上階では「アミュラン」と言う赤い大観覧車が廻っている。
つい最近、2004年の開業以来初めてとなるお色直しが行われている。
赤いフレームはそのままに、ゴンドラが赤色から白色に塗りかえられたばかりと言う。
「一人で乗るのは侘しいけど・・」と言うと、「大勢、いらっしゃいますよ」と慰められる。
「シースルーゴンドラなら10分待ち」と言われ、時間も無いのですぐに乗れる白いゴンドラに乗り込む。
ユックリユックリ廻るゴンドラは、凡そ7分で91メートルの最高地点に到達する。
駅前で視界を遮るスーパーやホテルの建物も、ここまで上がればもう関係ない。
人口60万人余り、東洋のナポリと言われる市街地の向こうに、桜島が錦江湾に浮かぶように聳えている。
正に活火山で、頂上付近からは、白い煙が上がるのがしっかりと見える。
正面眼下の駅前には、商業施設やホテルの高層ビルが立ち並び、その中央を貫くのがナポリ通りの並木道だ。
緑化された市内電車の軌道敷きの、芝の帯が伸びているのも良く解る。
振り返ると、銀色に輝く巨大な駅舎の屋根が見え、真新しい軌道敷きが西に向かって延びている。
更に北に目を転じると、城山の緑の小山も見える。
初めてこの地を訪れたのは、もうかれこれ40年以上も前のことである。
大隅半島佐多岬の佐多港から、錦江湾フェリーで対岸の山川港に渡り、指宿に立寄り、その後鹿児島入りをした。
あの日も桜島は良く見えた。
当時の写真(最下段右)と見比べると、市街地の高層建築の数に圧倒的な違いを見出す事が出来る。
駅前から続く、ナポリ通りの並木もまだ今のようには伸びてはいない事もよく解る。
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