湯の峰温泉

 

 「熊野本宮大社」前からタクシーに乗り、15分ほどで湯の峰温泉のバス停前に到着した。

川湯、渡瀬などと「熊野本宮温泉郷」を形成する「湯の峰温泉」は、1800年前に発見されたと言う。

日本最古の温泉で、古くから熊野参詣前の湯垢離場(ゆごりば)として栄えたところだ。

 

熊野信仰が栄えた中世は、「蟻の熊野詣」と言われる程、参詣の人々が途絶える事もなかったと伝わっている。

街道を歩き疲れた参詣者が、やっとの思いで辿り着いた当地で、参詣前に温泉粥を頂いて長旅の疲れを癒した。

と同時にお湯につかって疲れを取り、心身ともにお清めをしたのだそうだ。

 

湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

湯の峰温泉

湯の峰温泉

 

温泉街の中央を湯の谷川が流れ、それに沿うように国道311号が通り抜けている。

そんな川と道路に沿って、旅館や民宿、食事処、ショップなどの家並みが、どこか懐かしい香りを漂わせている。

凡そ300メートルほどの町並みは、歴史有る温泉街の落ち着いた風情を今に伝えている。

 

古道歩きのハイカーの団体であろうか、華やかに装った、賑やかな塊が幾つも見受けられる。

温泉街入り口に駐車場があり、そこに車を止め歩いてくる、楽しそうな家族連れやカップルも多い。

そんな群れの中には、外国人観光客の姿も随分と目につくのは、世界遺産登録の効果で有ろう。

 

湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

 

温泉街の中心の湯元橋を降りた川原に、「湯筒」と言われる源泉の自噴口がある。

90度近い湧出温泉で卵や野菜を茹でる施設で、周辺の店では卵、サツマイモ、とうもろこし等が売られている。

ネットに入れて湯につけておくと、卵なら10分程度でゆであがると言う。

近くには有料の「温泉汲取り所」もあり、大きなポリタンクを幾つも持った人たちが、引っ切り無しに訪れる。

話しを聞くと多くは、料理やコーヒーを淹れるのに使うと言う。

 

 温泉街の中心部に立つ「あづまや」は、「日本秘湯を守る会」の会員旅館で、江戸時代の創業と言う老舗旅館だ。

木造2階建ての建物は、山際の傾斜地に立てられているので、3階建てのように見える。

町は「小栗判官」と「照手姫」縁の地らしく、物語を伝える案内板なども掲げられている。

また温泉発見者の慰霊碑、熊野古道大日越道入り口などもある。

 


 

薬王山東光寺 湯胸茶屋と薬師の餅

 

 温泉街の中央に、「南無薬師如来」と書かれた赤い幟旗を並び立てる寺がある。

寺と言う程の境内が広がっている訳でもないので、むしろお堂と言った方が良いのかもしれない。

その薬師堂と言われる本堂に、薬師如来を祀る、「薬王山・東光寺」と言う天台宗のお寺だ。

一時廃寺となり寺領を失った時期も有ったらしいが、再興されたのが現在の寺である。

 

「当地に湧き出る温泉で、薬師如来の姿になった湯の花の塊を見つけた」

そこにお堂を建て、それをご本尊としてお祀りしたのが始まりとの寺伝が伝えられている。

その如来の胸から温泉が噴き出ていたことから、当初は「湯の胸温泉」と言われるようになった。

それが何時しか「湯の峰温泉」に転化し現在に至ったのだが、今では全て「湯の峰」との表現に変わっている。

 

湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

 

東光寺の本堂に上がる階段の脇に、「本日薬師の餅 裏の茶屋で販売しています」と書かれた看板が見える。

「薬師の餅」とは、温泉で蒸したもち米を、朝境内で臼と杵を使いつきあげたお餅だそうだ。

その餅で手作りの餡を包んだもので、毎日ではなく、不定日に搗きあげた時だけ販売されると言う。

 

 本堂の横を回り込むと、その裏にお寺が経営する「湯胸茶屋」がある。

この茶店では熊野のお酒、熊野サイダー、那智黒や薬師の湯水等、熊野の土産が数々売られている

店先には縁台なども置かれ、温泉で入れたコーヒーなどもあり、お餅はここで頂くことが出来る。

 

湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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お餅のメニューは、ぜんざいが600円、焼きあんこ餅、きなこ餅、しょうゆ餅はそれぞれ350円である。

「焼くのに時間が10分程かかりますが・」と言われたが、迷わず焼きあんこ餅を注文した。

 

暫く待つと美味しそうに、こんがりときつね色に焼きあがった餅が届いた。

焼かれた小振りの餅からは、白い湯気を微かに立ち、黒光りのする手作り餡が弾けて見えている。

温泉水の性かすこし柔らか目だが、とても美味しい餅で、餡の甘さもほど良く、番茶との相性も悪くない。

 


 

世界遺産・つぼ湯

 

世界遺産でありながら「つぼ湯」は、世界最古の共同浴場とも言われるだけに、今でも入浴が可能だ。

入浴には湯元橋前の「湯の峰温泉 売店・食堂」の隣にある「温泉チケット売り場」で入浴券を購入する。

券売機で入浴券を購入すると、引き換えに窓口で、番号札(入浴時に入り口に掛けておく札)が手渡される。

 

混雑時は数時間待ちとなる事も有るらしく、札を見ればどこまで順番が進んでいるのか分かる仕組みだ。

入浴をするなら、滞在時間は十分に確保した上、到着したら直ぐに入浴券を購入しておくのが良いだろう。

この日はすでに一組が入浴中で、その後に二組が予約待ちで、その次だと言う。

入浴は一組30分以内と決められているが、それでも1時間以上は待つことになる。

 

 世界遺産「つぼ湯」は、湯気の立ちのぼる清流の脇につくられた、小さな小屋の中にある。

入口の扉の前で履き物を脱ぎ、湯壺のある小屋に入る事になる。

とそこは周りを板戸で囲った、広さは4畳半ぐらいの空間で、壁の上部は開閉が出来るようになっている。

以前は川原の野天であったらしく、後から囲いを設けたのでこのような構造に成ったらしい。

その板囲いの隙間から差し込む陽光が、幾本もの筋となり、岩肌を照らす様は何とも幻想的で良いものだ。

すぐ横を流れる川のせせらぎも、その隙間から入り込み、耳に心地良く届き雰囲気は充分だ。

 

湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

 

内部は左から天然の大きな岩が迫り出していて、その足元の不安定な場所が脱衣場だ。

そこから一・二段と下りると、一畳分程の石張りの洗い場が有り、その前が天然の岩をくり抜いた湯つぼだ。

 

含硫黄ナトリウム炭酸水素塩化物泉で、お湯は日に何度か色を変えるらしく「七色の湯」と呼ばれている。

2〜3人も入れば窮屈な程小さな狭い風呂には、この時は白濁したお湯が満たされていた。

この硫黄が匂う、かなり高温なお湯は、底から湧きあがっているようだ。

 

かなり熱く少し我慢しで静々と浸かってみるが、身体を動かすとピリピリと肌を責められるように感じる。

水道の水も用意されているのだが、折角の源泉を水で薄めるのはもったいない。

恐らく43度以上か、もう少し高いかも知れないが、入れなくはない。

それでもじっとしていると、冷えた身体にお湯が浸透し、その熱さがなんとも心地よく感じられてくる。

 

 

湯の峰温泉公衆浴場

 

 温泉街には公衆浴場があり、「普通湯」と「くすり湯」と言う二つの浴槽がある。

「つぼ湯」を利用(770円)すれば、その入浴券でそのどちらか一カ所に入浴することが出来る。

温泉街の中心、東光寺の横に建つ、一寸古びた建物がそれである。

 

玄関を入ると二つの入り口が有り、一方が加水湯の「普通湯」で、他方が加水無しの「くすり湯」だ。

「くすり湯」は入浴するだけで、石鹸やシャンプーを使うことは禁止されているが、矢張りこの湯は外せない。

扉を開けて中に入ると、立派な玄関の割には左程広くはない脱衣所が有り、その前の扉を開けると浴室だ。

思ったよりも小さなて、10人も入れば、たちまち一杯に成ってしまいそうな湯船である。

 

湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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湯の峰温泉

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先客が開けてくれた隙間に浸かると、湯は結構熱つかったが「つぼ湯」で慣れたのか難なく入ることが出来た。

お湯は少し青み掛かった濁り湯で、少しぬめりが有る様にも感じる。

豊かに硫黄の匂いも満たされ、湯の花も浮かんでいて、評判通りの良いお湯である。

 

浴槽にはすでに数人が、肩を寄せ合うように、首までどっぷりと湯に浸かっていた。

洗い場には、真っ赤に火照った体を冷ましながら、再度の入浴を待つ何人かの人もいて込み合っている。

暗黙のルールでもあるのか、10人ほどが何度か入れ替わりながら、入浴と冷ましを繰り返している。

 

「随分と込んでるネ、こんなことは珍しい、いつもは貸し切り状態なのに」と言いながら男性が入ってきた。

聞けばこの湯が大好きで、大阪から何度も来ていて、今日は孫などと家族連れだって来たと言う。

随分と長湯をしてしまったので、これを潮に湯を上がる。

 



 

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