緑と雪と温泉のふるさと」。

 

小谷村は、長野県の北西部、新潟県との県境に位置する人口二千数百人程の小さな村だ。

周囲を山に囲まれた地で、全面積の9割近くを森林が占めていると言う。

小さな盆地で、中央を姫川が日本海に向けて流れる、見た目では何とも静かで長閑な山里である。

周辺は、日本海側気候に分類され、冬の寒さは厳しく「特別豪雪地帯」に指定される典型的な雪国だ。

しかも静岡と糸魚川を結ぶ構造線、所謂フォッサマグナ上に有り、災害の発生しやすい地形だという。

 

村内には、小規模ながら泉質が良いと言われる温泉が幾つもある。

「白馬乗鞍温泉」、「小谷温泉奥の湯」、「奉納(ぶのう)温泉」、「来馬温泉」、「下里瀬温泉」等だ。

中には、一軒宿の秘湯も有るが、周辺はどこも豪雪地帯で、4月半ば過ぎまで営業が出来ないところも多いと言う。

 

大糸線の沿線は、夏の登山のみならず、冬はスノーリゾート地として賑わいを見せる。

ここにも白馬コルチナ、栂池高原の三大スキー場が有り、駅前からスキー場を巡るバスが運行されている。

しかし昨今では、スキー人口は減少傾向に歯止めが掛からない状態らしい。

その分スノーボード人口が増えているかと言えばそうでも無く、こちらはほぼ横這いだ。

 

小谷村

小谷村

小谷村

 

小谷村

小谷村

小谷村

 

日本生産性本部のレジャー白書、「余暇活動参加人口上位20種目(2019年)」がその事を裏付けている。

スポーツ関連ではウォーキングが10位、器具不使用の体操が19位だが、スキー・スノーボードはランク外だ。

それらの用品の市場規模は1980年代後半から急伸したが、90年代にピークを迎えたがそれ以降は縮小している。

 

 昭和の鉄道全盛時代には、この路線でも新宿始発の急行「穗高」、「アルプス」、「白馬」等が運行されていた。

しかし今日では、優等列車も首都圏からの特急「あずさ」が、南小谷まで一日一往復乗り入れているだけだ。

冬のシーズンには、長野と南小谷間に臨時快速が一日一往復増発されるが、これだけだ。(202012月現在)

こんな具合だから、アクセスともなると、今日の鉄道では何とも心許ないようだ。

多くのスキー客が入り込む冬は、首都圏、中京圏、関西圏等からの高速道路経由のバス利用が多いと言う。

 

小谷村

小谷村

小谷村

 

小谷村

小谷村

小谷村

 

豪雪地帯の小谷村の主要な道の除雪は完璧で、車の通行には支障がない。

ただ歩道ともなると、所々に取り除かれた雪がうずたかく積み上がり通路を塞いでいたりする。

日陰等は、残った雪が凍り付き滑りやすく、慣れない身には危なくてしょうがない。

 

村役場の近くに、「小谷村郷土館」の看板を見付け、立ち寄って見る。

そこは役場を中心に、警察署、古民具店、パン屋、食堂などが集まる小谷村の繁華な一画だ。

茅葺きの屋根に雪を頂いた古民家風の「小谷村郷土館」と、蔵をイメージした瓦屋根の「小谷名産館」が建っている。

 

 名産館は村内で収穫した様々な物品を販売すると直売所で、「田舎ソバ」が一売りの食事処が併設された施設だ。

郷土館は長い間村役場として使われた建物で、その後村の民俗、考古学、歴史などの資料館として生まれ変わった。

有料施設として内部が公開されているというが、生憎冬期休館中であった。

 


 

下里瀬温泉

 

 下里瀬(くだりせ)温泉は、松本と糸魚川を結ぶ国道148号線沿い、駅から車で5分程のところに有る。

宿泊のみではなく、立ち寄り入浴に加え、ランチスポットとしての利用も多いそうだ。

今宵はそんな、姫川の畔に建つ一軒宿「サンテ・イン・おたり」を予約している。

到着は事前に伝えてあり、南小谷の駅前には迎えが来ているはずだ。

 

ビジネスホテル並みの低料金でも泊まれる気軽な宿としても知られている。

夕食は豪華で、多くの品が並ぶ訳では無いが、ここでしか味わえない地元産の食材等を使った食事に手抜きは無い。

特に夕食の締めとして出される手打ちの二八ソバは、宿自慢の逸品で、味も香りも申し分がない。

 

下里瀬温泉

下里瀬温泉

下里瀬温泉

 

下里瀬温泉

下里瀬温泉

下里瀬温泉

 

下里瀬温泉

下里瀬温泉

下里瀬温泉

 

下里瀬温泉

下里瀬温泉

下里瀬温泉

 

 下里瀬温泉は、泉温がやや低い31.8度と言う自家源泉を持つ宿で、日帰り入浴も出来る。

泡沫湯、寝湯、水風呂、圧注湯やサウナ等、多彩なお湯が楽しめるのが売りである。

ただこの温度では流石に冬場は温くて入れないので、幾つもある浴槽は、加温したお湯が満たされている。

 

その中でも古代檜材の小さな浴槽は、冬でも源泉がそのまま満たされ、これが温泉フアンの人気を呼んでいる。

所謂冷泉で、流石に冬場は温すぎていきなり入る事は出来ない。

大浴場等で充分温もった後、この若干ぬめりのある湯にゆっくり浸かると、身体が芯から温まってくる。

このナトリウム炭酸水素塩・塩化物温泉は、女性には美容効果が有るとして特に人気だ。

 

 又浴室の前には、整骨院が併設され営業を続けているのが珍しい。

天然温泉の後のマッサージや、周辺には多くのスキー場が点在しているので、それなりのニーズがあるらしい。

 

 

糸魚川へ

 

 糸魚川へは7時38分の始発を逃すと、次は10時台で、それ以降16時台までは凡そ2時間に一本程度しかない。

夕方以降は、19時台と最終の21時台に各一本有るだけの、一日7本の運行である。

JR西日本の管轄区間に入り極端にその本数が減り、非電化の路線は正にローカル線そのものである。

 

駅に戻り、折り返しの10時4分発糸魚川行きで、終着の糸魚川を目指す。

到着したキハ120型の車内は暖房が良く効いて暖かく、外の厳しい寒さが嘘のようだ。

客は極めて少なく、地元のご老人や、鉄道ファンらしき男性、外国人女性のグループを入れても10人にも満たない。

 

下里瀬温泉

下里瀬温泉

下里瀬温泉

 

下里瀬温泉

下里瀬温泉

下里瀬温泉

 

下里瀬温泉

下里瀬温泉

下里瀬温泉

 

 

南小谷から終点糸魚川まで、鉄道の営業キロで言えば残り35q余り、日本海に流れ下る姫川にほぼ沿って進む。

沿線は、中央地溝帯(フォッサマグナ)の谷間であると同時に、名うての豪雪地帯でもある。

こんな鉄道の強敵は雪のみで終わらず、この地勢で発生する断層地震の多さで、度度災害をもたらしてきた。

 

又、ひとたび雨も降り出せば、普段は穏やかな姫川も、一転暴れ川と化し大洪水を引き起こす。

平成7年豪雨では、甚大な被害が発生し全線の復旧に2年余りを要している。

大糸線は、そんな自然の驚異に曝され、翻弄され、運休と復興を何度も繰り返しながら、健気に今も生きている。

 



 

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