石和 温泉と果実郷
身延線の終点甲府で中央線に乗換え、今晩の宿を予約した石和温泉を目指す。
石和温泉は首都圏からJRで1時間半ほどと近い、山梨県内でも屈指の歓楽的な温泉郷として知られている。
周辺は桃、イチゴ、ブドウ、りんご等果物の産地で、果実郷と言われ、季節に応じたフルーツ狩りも楽しめる。
温泉の歴史は比較的新しく、昭和36(1961)年、農場の敷地を試掘したところ高温の湯が沸き出した。
湯は付近の川や田畑に流れ出し、即席の「青空温泉」となって瞬く間に全国に知れ渡り、これが原点となった。
今では幾つもの源泉が掘られ、最盛期からは減ったが数十軒もの旅館ホテルなどを有する一大温泉郷に成長した。
泉質はアルカリ性単純泉で、疲労回復、冷え性、打ち身や神経痛に効能があると言う。
ホテルくにたち
この日予約した宿は、駅から歩いて20分程(無料送迎有り)の閑静な宿である。
近津用水に沿った「さくら温泉通り」に面した、「夢あふれる花の宿 ホテル くにたち」である。
全館畳敷きで、部屋に面して中庭が有り、花に囲まれた池では鯉が泳ぐ寛ぎの空間が自慢の宿である。
露天風呂付き大浴場、薬石湯、宿泊者向けの貸し切り風呂などを備えている。
温泉街では折しも「石和温泉さくら祭り」が行われていた。
宿に入り、早々と入浴を済ませ、夕食をしていると仲居さんが行列の始まりを伝えてくれた。
開催の合図なのか、どこかで花火の上がる音が響いている。
急いで食事を済ませ、カメラを手に表に飛び出してみると、宿前の道は、すでに人が溢れていた。
芸者衆が神輿担いで
玄関にも紅白の幕が張られ、祭りムードを盛り上げている。
宿の前では、女将さん達が総出で振舞い餅を搗いていて、先程宿の食事でもつきたての餅が振舞われた。
彼方此方に即席のビアホールが設けられ、うどんやおでんの肴、生ビールが提供されている。
用水に沿ったさくら温泉通りの桜は満開で、紅白の幕を張り巡らせた臨時の花見会場も設けられている。
祭りの呼び物は何と言っても、夜桜の下を練り歩く芸者衆の担ぐ神輿行列である。
通りは、各々宿の浴衣を着た泊まり客や一般客で溢れ、人波はみるみる内に膨れ上がっている。
既に出発したらしいとの情報が流れ、遠くで掛け声が聞こえるものの、神輿は一向にやってこない。
道の中央を開け、声のする方を、首を長くして伺うが、暗闇の中に赤い光の塊が朧気に見えるだけだ。
行列は各旅館の前で止まっては、デモを繰り返すので、なかなかこちらの方には進んで来られないようだ。
「わっしょい、わっしょい」、柔らかで可愛らしいかけ声が近づいてきた。
揃いの法被にねじり鉢巻きも凜々しく、中には片肌脱いだ綺麗どころが、旅館の前では一段と声高に気勢を上げる。
道路脇の見物客も、神輿を取り巻いて、「わっしょい、わっしょい」と身体を揺らして囃し立てる。
周囲を興奮のるつぼに巻き込んで、大盛り上がりだ。
一頻り気勢を上げると休憩タイムだ。
温泉街の芸者衆とあってサービスも満点で、法被姿の芸者衆と観光客が、思い思いに記念写真におさまる。
カメラを向けるとアルコールも入っているせいか、笑顔のポーズで応えてくれ、あちこちで大きな歓声が上がる。
ビールやお餅がふるまわれ、夜の更けるのも忘れ、温泉街のさくら祭りは最高潮に達していく。
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