これでも本線 留萌本線

 

 留萌本線は、深川から留萌を経て、増毛に至る66.8Kmのれっきとした「本線」である。

しかし、運行されている列車の本数は少なく、ローカル線そのものだ。

深川から途中の留萌までは、比較的本数も有って・・と言っても凡そ2時間に1本程度である。

それが留萌から先、終点の増毛までとなると、日に数本とさらに減ってしまう。

 

 深川発85分の列車は、キハ541両のワンマン運転である。

日曜日のせいか、通勤・通学客の姿はなく、乗り込んだのはたったの4人と言う寂しさだ。

この車両、窓ガラスが二重になっているのがいかにも北海道らしい。

 

留萌本線

留萌本線

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留萌本線

留萌本線

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留萌本線

留萌本線

留萌本線

 

留萌本線

留萌本線

留萌本線

 

 次の北一已は、「きたいちやん」と読む、難読駅の一つだと思う。

秩父別には味わいのある木造駅舎が残されていた。

石狩沼田は、嘗ての札沼線の接続駅で、ここから南に延びる新十津川駅迄の間凡35kmは廃線になっている。

 

 列車は20分ほどで恵比島に到着する。

ここは、かつて繁栄した雨竜炭田の各炭鉱に向かう留萌鉄道への分岐駅であった。

掘りだされた石炭は、ここから本線の留萌を経て、そこから延びる臨港線により留萌港まで運ばれていた。

 

駅前にパラパラと僅かばかりの人家が散在する山間の地だが、最近では観光スポットとして知られた駅だ。

その理由は、この駅のホーム上にある、ロケ用駅舎が人気を集めているらしい。

嘗て放映されたNHK朝の連続テレビ小説「すずらん」で使われた「明日萌駅」で、そのまま残されている。

 

留萌本線

留萌本線

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留萌本線

留萌本線

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留萌本線

留萌本線

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留萌本線

留萌本線

留萌本線

 

 左手遥か先には僅かに雪を残す山塊が見え、反対側の右手には、低い山並みが緩やかに続いている。

一際高い山を地図で調べるとどうやら、暑寒別岳(1491m)のようだ。

 

その先は北に天塩連峰、南に増毛山地を擁する峠で、この先で石狩地方と天塩地方の国境を目指す。

線路の直ぐ際まで山肌が迫り、草深い雑木林が展開し、車窓からは暫く民家の姿は見えなくなる。

かつて蒸気機関車が悪戦苦闘した国境の峠を越えると峠下で、古い木造駅舎が残されている。

 

留萌本線

留萌本線

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留萌本線

留萌本線

留萌本線

 

留萌本線

留萌本線

留萌本線

 

ここまで途中駅で律儀に発停を繰り返してきたが、その時間は極めて短く、止ったかと思うとすぐに発車する。

停まったところで、駅での乗客の乗り降りが殆どなく、日本一の赤字路線と言われる訳が良く解る。

 

 幌糠と、藤山の次の大和田は、供に車掌車を改造した駅舎で、色も形も瓜二つだ。

藤山には木造の古い駅舎が、秘境駅の面影を見せていた。

更に進んで留萌川を渡ると河口に広がる留萌の町で、アイヌ語で「潮が奥深く入り込む川」と言う意味らしい。

 

 

終着駅・留萌

 

終点の留萌には1時間足らずで到着した。

相対する2面のホームに2線を有する地上駅で、駅員がいるが、人の気配が感じられない静かな駅である。

 

留萌本線はここから先、増毛まで延びていて、この駅が本線の中間の様な存在である。

とは言え、この先は更に運行本数は少なくなり、完全な過疎の地を行くローカルの様子だ。

次の増毛行の普通列車が出るまでに、3時間以上も待ち時間が有る。

 

留萌

留萌

留萌

 

留萌

留萌

留萌

 

留萌

留萌

留萌

 

嘗て留萌は、北海道北西部に於ける鉄道の拠点駅であった。

宗谷本線の幌延に向け、日本海に沿って北上する国鉄羽幌線が延びていたが、昭和621987)年廃止された。

天塩炭礦鉄道線や、北留萌や西留萌に貨物輸送する臨港線も延びていたが、昭和初期には全て廃止されている。

 

 

大判焼きと豚ちゃん焼 留萌の町

 

 留萌で観光の代表的なところと言えば、夕日の美しいスポットとして知られる黄金岬がある。

駅から、公園までは歩くと2キロ半ほどあるらしく、流石に遠いし、夕日の時間帯でもない。

駅の待合にずっといるわけにも行かず、折角だから町を少し歩いてみる。

 

駅も余り人の気配が感じられなかったが、駅前にも若干車が見える程度で、静かな町である。

駅前から続く広い通りを行き交う車も少なく、歩く人の姿もほとんど見られない。

そんな駅前通りの左角に「駅前市場」が有ったが、生憎と日曜日でシャッターが下りている。

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

そこから5分ほど歩くと「お勝手屋・萌」と言う物産店があり、観光案内所が併設されていた。

冷房の効いた店内では、「萌っ子グッズ」が一押しの商品らしい。

 

四方山話で時間つぶしをしていると、増毛に行くバスが駅前から出ていると言う。

時刻表を調べてくれて、「もうすぐ来る」と言うので、教えられたバス停に急いで向かう。

留萌本線の留萌と増毛の間の乗り潰しは、折り返しの便ですれば良いので、早々に案内所を後にした。

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

 バス停近くで「大判焼き」の看板を掲げた店を見つけ、バスが来るまでまだ少し時間も有るので訪ねてみた。

お腹もすいていたので、取りあえず「大判焼き」を注文し、出してくれた熱いお茶と共に味わってみる。

美味しかったので、調子に乗ってさらに「たい焼き」も注文した。

 

その時メニューに書かれていた「豚ちゃん焼」が気に成ったので、「これは?」と聞いてみた。

すると、「食べてみてください」と言うので、「じゃぁ一つ」と言って、一つ頂いてみる。

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

 豚の形をした生地皮を割ると、中身は細切れ野菜と豚のひき肉が、カレー風味に味付けされ詰められている。

かじってみると、カレーパンのような、ギョーザのような不思議な味わいが美味しくて、これは悪くは無い。

またその食感が微妙で、不思議で、それが詰められた具の美味しさをより一層引き立てている。

ただ、美味しかったが、あんこものを食べた後に食べるものでは無く、やはり先に食べた方が良い。

 

夫婦で営む店は、昔から留萌では一寸した有名店で、ここの一番人気はこの「豚ちゃん焼」と言う。

この不思議な食べ物は、地元では手軽なおやつとして親しまれているらしく、留萌の隠れた名物である。

 


 

思わぬ絶景

 

 増毛行の電車まで時間が有りすぎるのでそれを諦め、ここからはバスで先を急ぐことにする。

バス停で待っていたら、「バスはまだこんから、ここで座って待て」と、待合にいた男性が席を空けてくれた。

「生活が苦しかったから、若いころは漁師やりながら、百姓もした、必死で仕事を覚えたものだ」。

昔語りをする、同じバスに乗ると言う男性の顔は、赤銅色の輝き、深い皺が刻まれていた。

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

 定刻到着したバスは、町中を回りながら停留所で発停を繰り返し、そのたびに大勢の乗客が慌ただしく入れ替わる。

鉄道が不便なだけに、生活の足としてすっかりバスが定着しているようだ。

待合で一緒になった男性が、留萌の町外れの停留所で降りてしまうと、バスの乗客は僅か三人となってしまった。

 

 バスは町中を外れ、礼受牧場辺りで海岸に出ると、その先は、殆ど海に沿って進む。

冬の厳しさを避けるものなのか、道路の海側にはところどころ風雪除けが建てられている。

浜辺に建つ民家の庭先にも、板を打ち付けたような風雪除けが見受けられる。

 

留萌の町

留萌の町

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留萌の町

留萌の町

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留萌の町

留萌の町

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留萌の町

留萌の町

留萌の町

 

そんな海辺の集落の風景に加え、海越しには、まだ雪が残る暑寒別岳が見え隠れし、車窓を楽しませてくれる。

並行するJR線よりも、海に近いところを走る車窓は、海岸線の変化も楽しく、思わぬ絶景を見せてくれた。

 

「観光をするなら、ここで降りると良い」

留萌の駅前から35分ほど経った頃、運転手に教えられてJRの留萌駅前でバスを降りた。

「えっ、どこが鉄道の駅?」

バス停の先には民家が見えるものの、周辺は雑草が深く生い茂っているただの広場である。

 

 

増毛の観光

 

 草むらの先にぽっんと佇むのが、留萌線の終着駅・増毛駅らしい。

観光の拠点になっているのが、何人かの観光客の姿がある。

ここから留萌に戻る普通列車が来るまでにまだ時間があるので、町中を巡ってみる。

 

駅前の通りには、築70年以上という民宿「ぼちぼちいこか増毛館」が異彩を放っている。

その並びには、洒落たカフェ「海猿舎」がレトロ感を漂わせている。

 

増毛

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増毛

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増毛

増毛

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その先には国の重要文化財に指定されている、昔の雑貨店「旧商家・丸一本間家」の巨大な建物がある。

所々洋風の意匠が凝らされ、和洋折衷の堂々たる建物で、当時の勢いをそのまま感じることの出来る名建築だ。

本間家は増毛町の発展には、無くてはならなかった豪商と言われた家柄で、内部は有料で公開されている。

100年ほど前の明治時代に建てられたもので、屋根を葺く瓦には家紋が掘り込まれている。

 

増毛

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増毛

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増毛

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 本通りを外れ、海に向かうと「千石蔵」と言う巨大な石造りの蔵が有る。

近くにある國稀酒造が所有する蔵で、内部は資料館として無料で公開されている。

当地はニシン漁で栄えた町で、そのニシン漁に使われた巨大な舟が展示されていて、その大きさに驚かされる。

昭和の終戦間もない頃に建造された船で、殆ど使われず、長い間倉庫に眠っていた物らしい。

完全な形で残されているのは極めて珍しく、鰊文化を伝える貴重な遺産と言われている。

 

増毛

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増毛

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増毛

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増毛

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棚に陳列されている

自動的に生成された説明

増毛

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更に進むと明治15年創業と言う「圀稀酒造」が有る。

ここは最北の醸造所として知られた造り酒屋である。

その奥に長く延びた作業場は公開されていて、試飲や見学をすることが出来、関連の商品なども売られている。

傍らには、醸造用水として使われる暑寒別岳の伏流水を味わえる施設も併殺されている。

 

増毛

ドアの前に立っている建物

中程度の精度で自動的に生成された説明

増毛

 

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増毛

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 町中に点在するこれらの古い建物は、「駅前の歴史的建物群」として北海道遺産に選定されている。

それらは、殆どが歩いて回れる範囲に集中しているのもこの町の特徴らしい。

歴史的な建造物に混じり、カフェ、食事処、テイクアウトの店なども多数点在している。

遺産巡りの傍ら、出来立てを味わいながらの散策も楽しいものである。

 

増毛

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増毛

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増毛

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 少し足を延ばせば、創建260年と言う古社・増毛厳島神社が有る。

彫刻の神社と言われるだけに、総ケヤキ造りと言う本殿には、見事な彫刻が施されている。

その近くにあるのが「元陣屋」で、元々秋田藩の陣屋跡に建つ総合文化施設だ。

 

増毛

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町外れの日本海を見下ろすやや高台には、「旧増毛小学校校舎」の木造校舎が残されている。

道内では最大で最古と言われ、つい先年まで現役で使われていたものらしく、堂々たる作りに圧倒される。

内部は不定期で、公開されているようだ。

 

 

毛の増える駅 終着駅・増毛

 

増毛は、アイヌ語で「かもめの多いところ」を意味すると言う。

当地は、江戸の時代からサケやニシンの漁で栄えた湊町である。

その積み出し駅として大正101921)年に開業し、広い構内に旅客や貨車がひしめき合い活気が溢れていた。

しかし今では、その広い構内には雑草が生い茂り、ただただ広いだけで閑散としている。

 

雑草の繁る広場の向こうを見ると、砂利を敷き詰めた広大な駐車場が有る。

その先に錆びた列車止めが立ち上がり、そこから二本のレールが、生えた草に見え隠れしながら伸びている。

その脇に、ただただ短いだけの、何もないプラットホームが、ジオラマのように佇んでいる。

如何にも最果て、寂寥感溢れる終着駅だ。

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

 単式1面1線の完全な行き止まり駅で、当然駅員も駐在していない。

到着した列車は、ここでは滞留することもなく、僅かの停車の後、すぐに折り返していく。

脇には駅舎とトイレが建ち、中には旧駅務室を利用したそば処や地元の物産を売る店、休憩所を備えている。

しかしこれも鉄道利用客向けと言うよりも、車で観光に訪れる客を意識した施設のように思われる。

 

駅前で、一際異彩を放っているのは「富田屋旅館」で、昭和8年に建てられた3階建ての木造旅館だ。

全国各地から、ニシンドリームを夢見て集まってくる大勢の労働者などを泊めたで有ろう、巨大な施設である。

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

その隣に建つのが、「風待食堂」で、観光案内所の看板を掲げているので訪ねてみる。

ここは昭和8年に建てられた建物で、駅と共に映画「駅・STATION」の舞台にもなったところだ。

 

増毛に来たからには、どうしても外せないものが有る。

それは「ぞうもう(増毛)」の霊験あらたか(?)」と、噂の高い入場券を購入する事で、ここで販売されている。

「二種類有りますが・・・どちらにされますか?」と言うので、「どっちが良く効くの?」と聞いてみる。

苦笑を浮かべながら「どっちも」と言うものだから、「じゃぁ、両方貰う」と二枚とも購入した。

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

終着駅・増毛

終着駅・増毛

終着駅・増毛

 

 定刻入線した普通列車からは、観光客風の乗客が随分と下りてきた。

閑散としていたホームには、この折り返し列車に乗ろうと言う人々がどこからとも集まって来る。

駅は、これらの人々と、終着駅に停車する列車を写真におさめようとする人々で、ひと時の賑わいを見せている。

 

増毛の駅で「たこ親父のたこ飯弁当」を買い込んで、キハ541両のワンマンカーに乗り込んだ。

車内は意外にも二十名近い観光客で結構込み合っている。

 

 

留萌線の車窓

 

 バス路線よりも高いところを行く列車の車窓は、バスとは違った趣が有る。

絶えず左手には、青い日本海が展開し、この目を楽しませてくれる。

特に発車間際に見える増毛港やマリーナなどは、町中を行くバスからは見られなかった景色で新鮮だ。

 

留萌本線

留萌本線

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留萌本線

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留萌本線

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留萌本線

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 箸別や朱文別は、単式のホームで、幅の狭い木製で、小さな待合室があるだけの簡素な駅である。

舎熊は、当地では最早お馴染みになった車掌車を改造した駅舎が置かれて居る。

礼受の目の前は海に近く、背後は小高い丘で、ここには有名な礼受牧場が広がっている。

途中駅の多くは海を見下ろす高台にあり、瀬越駅から見える海岸にはサーファーの姿もあった。

 

留萌本線

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 沿線の駅のホームは、どこも板敷きの粗末なもので、列車一両分ほどの長さしかない。

そんな粗末なホームには列車を待つ乗客の姿も無く、停車した列車はすぐに扉を閉め発車していく。

そんなことを繰り返しながら、留萌には25分ほどで到着した。

列車はそのまま深川行となり、日本一の赤字路線の乗り潰しが終わることになる。

 



 

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