鉄道員の駅

 

 根室本線は、滝川から帯広や釧路を経て根室に到る、道央と道東を結ぶ一大幹線である。

しかし、千歳線や石勝線が整備されると、幹線の座は完全に奪われてしまった。

新線は、距離も時間も大幅に短縮出来、現在では優等列車は全てここを行くことになる。

 

そんなわけで、富良野から新得の間も、決して便利の良い路線とは言い難い超ローカル線に成り下がった。

日に6本しか運行がなく、1645分を乗り過ごすと次は19時過ぎの便までない。

そんな事情も有ってか、この夕方のキハ40系の1両・ワンマン運転の車内は、ほぼ満席の込み様だ。

通勤・通学、買い物帰りの客に、観光客らしき姿も混じっている。

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

 車窓右手に展開する芦別岳はますます近くなり、中々の絶景を見せてくれる。

山辺駅のホームに残されている、煉瓦造りの小さな小屋は、ランプ小屋(危険物倉庫)らしい。

 

下金山、金山を過ぎる辺りで次第に芦別岳は背後に去り、線路は東に向け大きくカーブする。

右手の金山ダムを過ぎ、空知トンネル(2255m)を抜けると、いきなり車窓が開け、金山湖が見える。

夕闇の迫る周囲の山は既に薄黒いシルエットとなり、湖面も暗く静に沈んでいる。

 

根室本線

根室本線

根室本線


 

根室本線

根室本線

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根室本線

根室本線

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根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

 次の東鹿越には、木造の駅舎が残されているが、当然のことのようにここも無人駅である。

依然目の前には金山湖が見えている。

暫くの間、木立に見え隠れしていた金山湖も遠ざかり、一寸した町並が見えてくると幾寅に到着する。

沿線では比較的利用客が多いらしく、ここで多くの乗客が降りていった。

 

その駅の、ホームの一段低いところに青い屋根の駅舎が有り、「幌舞駅」と書いてある。

浅田次郎の短編小説を、高倉健が主演で演じた映画「鉄道員」で使われた駅だ。

廃止寸前のローカル線「幌舞線の終着駅・幌舞駅」との設定で映画は撮られている。

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

幾寅を出ると、車窓を遠巻きにしていた山々がより近くなり、やがて山間地にある落合に到着する。

今でも島式と単式ホームの2面3線を持つ駅で、構内は広く、線路を撤去した線路跡も見えている。

これは嘗て急勾配区間であった狩勝峠越えを支援する、機関車を配置していた名残である。

ここにも木造の駅舎が残されているが、乗降客は極めて少なく、無人駅である。

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

 根室本線は落合を出ると、狩勝峠の急勾配区間を解消するために掘られた長いトンネルに突入する。

北海道の背骨、日高山脈を貫く、国境の新狩勝トンネル(5810m)で、同本線では最長である。

その中で石勝線と合流し、更に上落合信号所を通過し、トンネルを抜けると新狩勝信号所である。

信号所は、構造上は停車場ではあるが、ここでは旅客や貨物の取扱いは行われず通過して、次の新得を目指す。

 

 

根室本線人跡未踏の地

 

石勝線は、南千歳から新得の間の132.4Kmの路線で、道央と道東を結ぶ幹線である。

乗車した特急が、南千歳を出て石勝線に入ると、如何にも北海道らしい車内放送が有る。

 

「エゾシカなど野生動物が沢山いる区間を走行しますので止むを得ず急ブレーキを使う事があります」と。

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

 追分は、室蘭本線との分岐駅だけに単式ホーム1面、島式ホーム1面に4線を有する大きな駅だ。

嘗ては石炭貨物の輸送を担った駅で、広い構内はその名残らしい。

 

追分けを出ると暫く室蘭本線と線路を共有し、やがて東に進路を変え分かれると夕張川と出会う。

その流れに沿うように進み、夕張に向けた支線と分岐する、新夕張に到着する。

この辺りは、雪が多いのか、至る所で線路を覆うスノーシェルターを抜けていく。

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

 石勝線は、原生林を切り開いたため、新夕張から新得の凡そ90qの間に、駅はたったの二つしかない。

一つは占冠だ。町の中心は駅からは離れているらしく、ホームからは物産館が見えている。

ここは、過去にマイナス35.8度を記録したと言う厳寒の地で、林業と酪農が盛んな町である。

 

もう一つは、嘗ては石勝高原駅と呼ばれていたが、付近がリゾート開発され、改称されたトマムである。

標高が537mの地にある駅で、北海道内では最高所で、有名なトマムリゾートへのアクセス駅である。

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

石勝線

石勝線

石勝線

 

 新夕張から占冠、トマムを経て新得に到る間には、旅客や貨物を扱わない、信号所が十数か所も有る。

将来の駅を想定したものだが、沿線人口は極めて少なく、この先人口増も見込めなく駅の開業予定は無らしい。

 この間では新線の開業当初から普通列車は運行されていない。

従ってこの間では、特急列車の自由席使用に限り、特急料金は不要で乗車できる特例がある。

 

 

国境の絶景

 

 「石狩十勝の国境を越えて、五分を要する大トンネルを抜けると、

右の方一望幾百里、真に譬(たと)ふるに辞(ことば)なき大景である」

 

以前この区間は、25‰と言う厳しい勾配区間で、狩勝信号所ではスイッチバックが行われていた。

当時の蒸気機関車は、狩勝トンネル(954m)を抜けるのに、5分も要していたという。

しかしトンネルを抜けるとその先には、日本三大車窓の一つ、十勝平野の大パノラマの絶景が広がっていた。

その先には、新内と言う駅もあつて、嘗てこの地を旅した石川啄木は、この絶景をこんな風に書き残している。

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

しかしこんな絶景も、列車の高速化の波には抗しがたかったようだ。

厳しい勾配を、長い新トンネルで避けた、現在のルートに付け替えられたのは、昭和41年のことだそうだ。

 

列車は新トンネルを抜けると、直角を曲がるような大きなカーブで進路を南寄りにとる。

暫く進むとその先で、今度はヘアピンのようなカーブで北に向き直る。

この間幾つかのトンネルや信号所をやり過ごし、もう一度大きく南に進路を変えると、終点の新得に到着する。

 

それでもこの間の車窓は、当時の三大車窓と言われた絶景に劣らない景色が展開する。

雄大な山々、緑濃い森や原野、切り開かれた広大な畑、遥か下には十勝平野の町並みが一望だ。

めまぐるしく移り変わり、スケールのでかい北海道らしい景色は、見るものを飽きさせない。

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

根室本線

根室本線

根室本線

 

 新得を出て、十勝清水、御影、芽室等を経てやがて列車は帯広に到着する。

起点の滝川からは180.1q、終点の根室までは263.7qも残している。

根室本線で言えば、ようやく5分の2程度が過ぎただけで、この路線の長さを実感する。

 

 

新得にて

 

 新得は、北海道のど真ん中の町だ。

駅から北へ43Km、町内に位置するトムラウシ温泉の西側が、「北海道の重心」と、平成5年国土地理院は発表した。

それを受け、駅前には「希望」と名付けられた裸婦の像と共に、「北海道の重心地」のモニュメントが置かれている。

トムラウシ温泉から、毎日ローリーで運んでいると言うお湯が楽しめる温泉施設、「新得町営浴場」が駅近くに有る。

 

新得

新得

新得

 

新得

新得

新得

 

新得

新得

新得

 

新得

新得

新得

 

年間の平均気温が7〜8度と言い、寒暖の差は50度以上に及び、夏暑く冬寒いところでもあるようだ。

この日中の寒暖の大きさが、そば栽培に適しているらしく、町ではそばの栽培が盛んだと言う。

今では信州を凌ぐそばの町を自負していて、この駅の近くにも、そばの看板を掲げた店が何軒かある。

 

新得

新得

新得

 

新得

新得

新得

 

新得

新得

新得

 

 また、十勝名物の「豚丼」を食べさせる店も有り、店先には黄色の幟旗を立てている。

そんな駅前の一軒のお店に飛び込んで、「豚丼」を食べてみる。

たっぷりとたれを潜った豚肉は柔らかくジューシーで、甘辛いたれの風味が、後を引くうまさである。

おまけに安くて、ボリュームも有って大満足だ。

 

 

帯広の豚丼

 

 新得から帯広までは、特急なら30分ほど、普通列車でも1時間も有れば到着する。

ここは十勝地方の中心で、重要な交通の結節点でも有り、一大ターミナルを構えている。

嘗てここからは襟裳岬方面に向かう、広尾線が広尾に向け延びていた。

およそ半世紀前も前に乗った懐かしい路線であるが、昭和621987)年、全線が廃止になっている。

 

根室本線

帯広の豚丼

帯広の豚丼

 

帯広の豚丼

帯広の豚丼

帯広の豚丼

 

当地にも、発祥が昭和8年と言われている、十勝地方の郷土料理「豚丼」がある。

昨今のB級グルメブームも有り、町中では数多くのお店が、その味を競っているようだ。

また帯広は、有名なスィーツ王国で、甘党やスィーツ好きにとっては見逃せないところでもある。

500円で好きな店5店のスィーツが味わえる「スィーツめぐり券」も販売されている。

 

豚丼の店の一つ、駅前のエスタ帯広西館にある「豚丼のぶたはげ」に立ち寄ってみる。

昭和9年創業と言うこの店は、この地では老舗の専門店、人気店でもあるようだ。

肉は4枚を「基本」に、6枚の「特盛」、3枚の「ハーフ」を、好みで選ぶことが出来る。

乗車する特急の時間を告げ、「大丈夫だ」と言うので、「特盛」を注文する。

値段が少し高いのでは・・と思えなくもないが、駅売りならこんなところかも知れない。

 

帯広の豚丼

帯広の豚丼

帯広の豚丼

 

帯広の豚丼

帯広の豚丼

帯広の豚丼

 

帯広の豚丼

帯広の豚丼

帯広の豚丼


 

帯広の肉は、網焼きとフライパン焼きが有るようで、この店は網焼きに甘辛いたれをたっぷりと潜らせている。

新得のそれと比べると幾らか薄味のようにも思われる。

 

分厚い肉は、柔らかくてジューシーで、噛みしめるほどに味があり、何枚でも食べられそうだ。

出来立てのアツアツを抱え、急いで1605分発の特急「とかち8号」に乗り込んだ。

発車も待ちきれず蓋を開けると、網焼きの香ばしい匂いが車内にも広がり、美味そうな香りが食欲をそそる。

缶ビールを買ってこなかったことを後悔した。

 



 

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